
ルエル・アスター・ルキフェル
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黒曜人物誌
CHR-007
名称:ルエル・アスター・ルキフェル
称号:闇の至宝
分類:神族/光と闇を結ぶ女神
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Ruel・Aster・Lucifer
ルエル・アスター・ルキフェル(Ruel・Aster・Lucifer)
父である「明けの明星(Lucifer)」が天空の威厳なら、娘である彼女の象徴は「Aster(星)」。 星は、深淵の如き闇の中でこそ、その真価を放ち輝く。 ゆえに彼女は、地獄の暗雲を優しく照らす光。 悪魔たちが畏怖と欲望を込めて呼ぶ二つ名は――「闇の至宝」。
母たる創世の女神の神性をその身に色濃く宿し、光と闇、二つの相容れぬ世界を結びつけるために生を受けた存在である。
第一章 父に育てられた娘
兄であるAuel皇子は、生を受けて間もなく永い眠りについた。 けれど、妹であるルエルは瞳を閉じることなく、この世界に留まり続けた。
幼き彼女を育んだのは、父である皇帝ルシフェルと、魔王アスタロトである。 冷徹な研究者であり地獄を統べる皇帝であった父は、戸惑いながらも不器用な愛で娘を包み込んだ。そしてアスタロトは慈母のように彼女をその胸に抱き、共に笑い、時に厳しく叱り、その成長を見守った。
ルエルは、地獄という過酷な世界において、もっとも多くの愛と祝福を注がれながら育った姫君であった。
第二章 生命を喰らう女神
しかし、彼女の美しさの裏には、逃れられぬ一つの宿命が刻まれていた。 ルエルは、他者の精気を己の生命の糧へと変換してしか生きられない。
それは飢えを満たす食事ではなく、他者を害する呪いでもない。 ただ「ルエル・アスター・ルキフェル」という生命が、この世に存在するための不可避の理であった。
幼少のころ、父ルシフェルは惜しみなく己の精気を幼い娘へと与え続けた。精気を分与するたび、強力無比なはずの皇帝すらも深い眠りに落ち、数日の間身動きが取れなくなるほどだったという。 彼女は誰かを傷つけるために奪うのではない。 ただ――生きるために、愛する者の生命を受け取るのだった。
第三章 闇の至宝
時が満ち、成長を遂げた彼女は、十五歳ほどの可憐な少女と、爛熟した大人の女性との危うい境界に佇む姿となった。
真珠のように透き通る白い肌。 微かな光を孕んで揺れる、淡い茶色の髪。 そして、夜空に瞬く星をそのまま嵌め込んだかのような、清らかな瞳。
その無垢な幼さと毒を含んだ妖艶さが同居する美貌は、瞬く間に地獄の悪魔たちを狂わせ、魅了していった。 いつしか深淵の底では、秘密めいた溜息と共にこんな言葉が囁かれるようになる。
「――闇の至宝を手にした者は、覇王となる」
それは単なる権力への野心ではない。地獄において勝ち得る、最高の栄誉と祝福を意味していた。
第四章 血と情欲の宴
激しい血戦を勝ち抜き、凄惨な武勲を挙げた悪魔たちが集う狂乱の宴。 その最高潮の終幕に、ルエルは姿を現す。
肌を滑る艶やかなドレスを纏い、凄惨な戦場を生き抜いた勝者たちの前へと、彼女は静かに歩みを進める。 彼女の濡れた肌に触れ、その腕に抱かれること。 それは単なる論功行賞の褒美などではない。地獄で最も名誉ある、死と隣り合わせの祝福。
ルエルという至宝を一人で抱き尽くせば、その男の生命は瞬く間に枯れ果て、途絶える。 だが、幾多の死線を潜り抜けた英雄たちが己の生命を分け合い、共に彼女を抱くことで、命からがら朝を迎えることができるのだ。 死を恐れて引き下がる者など、そこには一人もいない。 男たちはみな、己の命が削り取られる激痛と歓喜の一夜を、生涯の誇りとして受け入れるのだった。
それが地獄という凄絶な国家の文化であり、揺るぎない価値観。 そしてルエル自身もまた、この宿命を悲劇だとは微塵も思っていない。 彼女にとって他者の命を喰らい、抱かれることは、「闇の至宝」として生きるために課せられた当然の役割であった。
第五章 唯一の騎士
そんな「地獄の共有物」たる彼女の心に、たった一人だけ刻まれた恋人がいた。 六柱第四位の騎士――フルーレティ。
彼は、誰よりも深くルエルを愛していた。 本当ならば、今すぐにでもその細い肩を抱き寄せ、宴の狂乱から連れ去りたい。 誰の指一本すら触れさせたくない。己だけのものとして独占したい。 胸を焦がす嫉妬と独占欲に狂いそうになりながらも、彼は誰よりも理解していたのだ。 ルエルが、一人の愛しい女性である前に、地獄を繋ぐ「闇の至宝」であることを。 彼女の真の価値と高貴さを知るからこそ、騎士として、彼女の宿命を奪うことなど許されなかった。
宴の夜。 フルーレティは感情を削ぎ落とした仮面の如き顔で、皇帝ルシフェルの傍らに直立する。 ルエルがどれほど他の男たちの腕の中で濡れ、甘い吐息を漏らそうとも、彼は決してその光景から目を逸らさない。 その静寂に満ちた無表情の奥底に、どれほどの苦悩と血の涙が隠されているかを知る者はいない。
けれど――地獄の誰もが知る、たった一つの真実がある。
地獄中の悪魔が熱望し、命を懸けて求める「闇の至宝」が、ただの可憐な少女として甘やかに微笑み、真心の愛を捧げる相手は、己が選んだたった一人の騎士だけであるということを。
宴が終わり、冷えた朝の光の中で向けられる彼女の微かな微笑み。 それこそがフルーレティにとって、いかなる武勲も、皇帝からの褒賞すらも遠く及ばない、生涯最大の誇りであり、生きる証であった。
黒の観察者
【観測記録 CHR-006】
人は愚かにも、形ある黄金を求める。 悪魔は果てなき名誉と栄誉を求める。
だが――本当に価値ある至高の存在とは、決して誰か一人の手によって所有されるものではないのだ。
だからこそ、彼女は「闇の至宝」と呼ばれる。

