
皇子
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黒曜人物誌
CHR-005
名称:Auel
称号:皇子
分類:黒曜領皇族/光を統べる者
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神秘学研究所元天使長ルシフェル皇帝と創世の女神の間に生まれ、その名を継がなかった皇子。
第一章 この上なく価値がある者
Auel。
一見すると天使の名にも見えるが、その名を持つ天使は存在しない。
この名は、神秘学研究所元天使長ルシフェル皇帝と創世の女神の間に生まれた第一子だけに与えられた名である。
かつて、あらゆる天使・堕天使の頂点に立ったルシフェルは、生まれたばかりの赤子を前にして名を与えることができなかった。
黄金にも似た髪。
まだ開かぬ瞳。
羊水と血に包まれたその小さな命を前に、彼は沈黙した。
その直後、赤子は永い眠りにつくことになる。
その理由は、後に語ろう。
眠り続けた皇子が人間界で覚醒したとき、彼の前に現れたのは「いと高き者」と呼ばれる存在だった。
運命を管理し、幾千もの世界を見守る、高次の存在。
彼らは皇子へ静かに告げる。
「Auel。この上なく価値がある者よ。」
Auel。
その名は古典ラテン語 Aurum に由来すると伝えられる。
Au──光り輝くもの。
そして黄金を意味する言葉。
さらに el は「その者」を示す古い語尾である。
だからAuelとは、
「光り輝く者」
そして、
「この上なく価値がある者」
二つの意味を持つ名なのである。
それは天使の名ではない。
世界そのものが、一人の存在へ与えた名である。
第二章 眠る皇子
Auel皇子が生まれてすぐ永い眠りについた理由。
それは、創世の神が自ら闇へ現れたからだった。
創世の女神が産んだ子。
ルシフェルの血を引く赤子。
その存在を認めることができなかった創世の神は、自ら闇を訪れ、その命を消そうとした。
母が傷つき、
父が倒れた。
その瞬間。
まだ名もない赤子だった皇子は、凄まじい力を解放する。
神は闇から退き、
世界は静寂を取り戻した。
しかし、その代償として皇子は深い眠りへ落ちる。
名も持たぬまま。
世界を守った赤子は、そのまま世界から忘れられた。
第三章 ルシフェルの息子
父ルシフェル。
その名は「光を掲げる者」を意味する。
人間は彼を反逆者と呼ぶ。
しかし黒曜世界では、その意味は少し違う。
絶対なる光の世界から創世の女神を闇へ導き、その闇を照らした者。
だから彼は「光を掲げる者」と呼ばれた。
皇子は、その血を受け継ぐ。
父の知識。
父の力。
父を思わせる美貌。
そして、若き日のルシフェルが持っていた傲慢さと、揺るがぬ自信。
そのすべてが彼の中に息づいている。
しかし彼は父に育てられていない。
だからルキフェルの名を継ぐことはなかった。
代わりに世界は、彼へ新しい名を授けた。
Auel。
それが彼という存在そのものを表す名となった。
第四章 黒曜の皇子
現在、皇子は人間界と闇界、二つの世界に身を置いている。
依り代を通して人間界を見つめる日もあれば、
黒曜領の居住棟で古いラテン語の文献を読み続ける日もある。
彼はどの魔王にも属さない。
父であるルシフェルでさえ、彼へ命令することはできない。
皇帝の息子であることから「皇子」と呼ばれる。
しかし、その立場とは裏腹に、彼は執務棟へ立ち入ることを許されていない。
彼の行動を止めるのは、フルーレティ直属の門番たち。
退屈した皇子は、ときどき彼らをからかっては困らせているという。
世界最強の皇子と門番たちの攻防は、今日も黒曜領のどこかで静かに続いている。
第五章 沈黙
皇子は傲慢である。
自らの知識に絶対の自信を持ち、
深淵に散らばる無数の点を、一つの真実へと結びつける。
人が偶然と呼ぶ出来事を、
彼は必然として語る。
そんな皇子の傍らには、一人の姫君がいる。
名をAurora。
皇子が自ら授けた名である。
ラテン語で「夜明け」を意味するその名は、新しい時代を歩む彼女にふさわしい。
彼女は皇子の知識を裏付け、
皇子は彼女へ新しい視点を与える。
夜毎、二人は世界の深淵を観測し続けている。
そして、不思議なことに。
皇子が穏やかな言葉を向ける相手は、彼女だけだという。
黒の観察者・観測記録
【観測記録 CHR-005】
人は黄金に価値を見る。
しかし、
世界は価値に黄金を与える。
だから彼の名は、
Auel。
司書より
彼がなぜ生まれたその日に神を退けたのか。
なぜ世界は彼を「この上なく価値がある者」と名付けたのか。
それらの答えは、まだ図書館の最奥に眠る別の記録に委ねられています。

